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好きと得意は別の話というか別の次元。

【#007|1度だけUFOを見たことがある話】

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 中学3年の夏休み、マンションの踊り場から隣県の花火大会が少しだけ見えていた。

 隣県との県境が比較的近いウチのマンションとその花火大会との間にはウチ以上の高い建物が建っておらず、花火のサイズさえ気にしなければ通常移動に1時間以上かかる花火大会まで外出3秒で毎年見ることが出来た。

 ただ、その年の花火大会は例年と違ったものが空を飛んでいた。踊り場から見える花火から右の方向に徒歩20分の小さい山があり、その山の奥側に当たる暗い輪郭から左直線にか弱い白い光が遅く飛行しており、途中で急に止まって強く光り始めて、先ほど来たルートを戻って暗い輪郭の内側(つまり山影で隠れる向こう側)に行き、また輪郭から弱い光りで飛び出して、先ほどと同じ所でピッタリ止まって強く光って、また山に戻る。

 この一連の動作を30分、1時間、花火大会も終わった2時間経っても一定に行っているのだ。

 とても普通ではない動きに興奮した私はリビングにいたオカルト好きの母に知らせて見せるも「点灯したクレーンが作業してるんじゃないの?」と冷静に返された。

 そんなわけはない、もう夜9時を回って作業する工事現場などあるものか。

 しかも気になるのが、その光る未確認飛行物体(UFO)の飛んでいる位置だ。

 実は強く光る所の奥には商業施設があり、その施設の最上階に設置された点灯よりも明らかに手前にいるのだ。その施設まで徒歩30分ちょっとで、その物体は想像を越えて近くにいる。またあの施設まで行けば光の正体を真下から知れるかもしれない。

 だけど夜も遅いし、外灯も少ない道を進まないといけないから踊り場でその光をただ見つめていた。晩ご飯を食べ終わっても物体は一定に飛んでおり、夏休みとはいえ夜11時を過ぎての外出はダメで、その日はおとなしく寝た。

 翌日の晩、昨日と同じくマンションの踊り場から山と施設を見張っていたが結局現れることはなかった。

 その年の夏休みの宿題(英語)に簡単な英語で日記をつける宿題があった。ただでさえつけるのが面倒な日記を英語で書くなど面倒の極みだが、この不思議体験はきっと日記の良いエッセンスになるに違いない! と私は確信していた。

 後日あの日いなかった英語が堪能な兄に事情を話し、分からない英単語・複雑な表現や文章添削など手伝ってもらって、その日の英語日記が出来た。たしか内容はこういう感じだった。

「今日ベランダで花火大会を見てたら隣の山から不思議な光のUFOが出てきて、一晩中同じコースを回っていた」

 夏休みが終わり、数多くの宿題が生徒の手元に戻るなか、あの英語日記が返ってきた。すぐにあの日の欄を見てみると、その日以前は赤ペンでチェックや多めの添削など書かれているのに、その日以降からチェックしか書かれていなかった。途中まで確認でセンテンス毎に赤ペンでトントンと軽く叩いた跡があるのに、その日からそういう跡が一切なかった。英語は常に赤点で前半も間違えてばかりなのに、いきなり何十日も連続でクリアするわけがない。

 当時はそれに理解出来なかったが、当時の先生に近い年齢になった今なら分かる。

「この子と関わっちゃいけない…」

 要するに頭がおかしいと思われる人に少しでも関わってはいけないのだ。その人の行為が正しい・間違っているの問題ではなく、常識の次元がそれを許してはいけないのだ。もし自分が英語教師で、教え子がこんな文章を送ってきたらどう思うだろう。明らかに中学3年の書く文章ではないから家族が手伝ったのだろうが、その忠告すらそれに関わったことになる。つまり教師にとってタブーな無視こそ常識の回答なのだが、その途中まで気がつかなかったことで後戻り出来なくなったんだと思う。

 だから以降は全て黙ってチェックだけ入れて私を終わらせた…というのが妄想も混ぜた現在の回答である。

 あれが本当にUFOだったのか、先生は無視したのか、時効と呼べるほど遠い未来まで来てしまったのだから、未解決ファイルとして段ボールの底にでも封印しておこう。まあ封印する以前に「終わったからいらねぇや」と数日後に捨てたのだが…。

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【本日の参考文献】

宇佐 和通
学研プラス
2017-08-23
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【あとがき】

 ここでこの英語の先生が私に対してどう思っていたのヒントに、過去編の第23話に出てくる英語の質問課題

先生
「What is your favorite things?」


「アイ ライク ポルノグラフィティ!」

 というセクハラ回答を受けてしまった英語の先生こそ今回の先生です。

 なので少なくとも「この生徒ヤバいわ…」とは思われてたと思います…苦笑