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好きと得意は別の話というか別の次元。

【#017|置き忘れのスマホ】

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 昨日の祝日の夜遅く、閉店間際のお好み焼き屋の前を通った。
 
 店から威勢の良い休日の兄ちゃん3人が暗い通りをキョロキョロ見渡していて、私の歩いた反対側の歩道に兄ちゃんの1人が大きく声をかけた。
 
「おばさーん! スマホ忘れてますよー!」
 
 どうやら店出た直後のお客がスマホ置き忘れたらしい。きっと店員がテーブル片付け中に見つけて、近くのテーブルで食べていた兄ちゃんたちが探してくれたのだな。世の中捨てたものでもないなと傍目に良い気分になった。
 
 暗い歩道の奥から「本当にごめんなさいねー!」と持ち主のおばさんが戻ってきて、スマホを持った兄ちゃんが駆け寄って、感謝しながらおばさんは再び暗い奥へと消えていった。これでトラブルは終わり。
 
 だから私は妄想を続けた。あのスマホは忘れ物ではなく、わざと置かれた物ではないと。
 
 このお好み屋は閉店間際になると訳有り気な人たちが入ってきて、最後から2番目の客が店を出ると主人は表の看板を《準備中》にして、そこから何か裏取引が始める。
 
 その情報をキャッチした警察がおとり捜査員(おばさん)に例のお好み焼き屋を潜入させ、最後から2番目になった捜査員は彼らの死角にわざとスマホを置いていく。録音か盗撮に特化された改造スマホは一晩かけて店内の情報を集める。翌日になって、捜査員は開店まもなくお店に訪れて「昨晩そちらにスマホ忘れた」と早急に回収すればミッション・クリアだ。
 
 だけど向こうも甘くなく、どこから情報が漏れたのか警戒態勢だ。工作員の店員もテーブル片付ける度に細心を払って異物を調べる。今回は失敗で死角からスマホが見つかってしまった。このまま処分しても良いが、翌日捜査員がやって来たら余計に怪しまれるかもしれない。主人はレジ横のノートパソコンからスマホの必要な情報だけ抜き出して、まだ犯罪前歴のない新人の手下たちからスマホを返却させよう。
 
「おばさーん! スマホ忘れてますよー!」
 
「本当にごめんなさいねー!」
 
 暗い歩道に消えた捜査員は人目から離れた黒い窓のワゴン車に乗り込む。
 
「キャップすみません。見つかってしまいました」
 
「いや構わない。何か他に情報は得られたか?」
 
 奥の膨大なコンピュータを操る別の捜査員が言う。
 
「ターゲットは指紋を拭き取ってますが、形状記憶のスマホカバーから指紋採取しました。それと指紋を拭き取ったおしぼりの繊維から工場を特定しました。我々がマークしていた製造工場と一致します」
 
「よし、摘発まで日は近いから細心の注意を払え」
 
「「はいっ!!」」
 
 ――寝静まる深い夜の中で小さなワゴン車の中だけが覚悟を響かせていた。
 
 何て物騒で楽しい妄想だろう。
 
 たったそれだけの妄想に包まれた夜は心地よく眠れた。

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【本日の参考文献】

周木律
2017-03-25
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【あとがき】

 秘密部隊とか特殊工作とか潜入捜査って異様にトキメキませんか?
 
 ドラマ『MOZU』『CRISIS』が大好きだった私には特にくすぐられます…!!
 
 一体何が良いんだろ、もちろん巨悪と戦う生き様とかカッコいいんですけど、それだけでないミステリアスというか煙たいエロさというか…中2心だな。自分の中2心的に疼くんですわっ!!(中2レベルの感想文)