何年前だったか忘れたが、用事の途中で人混みの多い街中を移動していたとき、わざわざ人混みの中をかき分けてまで私に近づく女性が現れた。経験上こういうのは勧誘系なので早く離れたいが人混みの壁に遮られた私はまんまと捕まった。
アラサーぐらいの彼女は私の顔を見ながらこう言った。
「私、占いの勉強をしてまして。それで練習代わりに様々な人から手相を見せてもらってるのですが、手相見せてもらっても良いですか?」
「いいえ。嫌です」と私が言おうとする前に彼女は私の手を引っ張って調べ始めた。なるほど、こうやって後戻りできないようにするのか。
「全体的に運勢は良いのですが、」
「ですが?」
「お兄さん、結婚運が低いですね。子供にも恵まれない相が出てますよ」
ずいぶんと失礼なことを言ってくるが、人はこういう弱い揺さぶりからの方がスルリと侵入されやすいのかもしれない。だからこそ私は軽快な口調で出た。
「そりゃできないですよ。男同士では」
私の手を離した彼女は真っ青な顔をして、人混みの彼方へと消えた。
本当に占いをやっているのなら私の嘘つきな本性を直ぐに見抜けるはずだ。だから彼女は本物のモグリだ。ツメが甘いんだよ、さよならー。
※このときは急いで場所移動したおかげで上司や先輩的な同業者に後から囲まれずに済んだが、実際は危険な行為なので決して真似しないように。
現在に至り、何気なくスマホでネットサーフィンしていたら、最近はLGBTQ向けの占いとやらがあるのを知った。
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【あとがき】
【あとがき】
ここから別の話になりますが、LGBTQ向けの占いというのもおかしな話ですねぇ。
ただ今日や明日や来年の運勢を占うだけなのに性別まで運に左右されるとは。手相にも男相と女相があるのでしょうか。占いサイトで逆の性別で占ったら違う結果が出るのでしょうか。朝の情報番組に出てくる星占いは性別まで想定しているのでしょうか。
「今日は積み重ねた努力が認められる日でしょう」
性別ではなくその星座の人として占ってるのだから、これぐらいシンプルな方が性別どころか老若男女関係なく楽しめます。
占いで一番性別を意識するものといったら恋愛系の相性占いですが、私たちが意識する前から運命は決められているのだから、これも「男と女」ではなく「人と人」として占うことは不可能なんでしょうか。むしろ人間の話なんだから男女より難しくないような。
もう星座占いとか姓名占いは古来から男女前提システムで構築されてるから変更は無理なんですよ…な雰囲気がありそうだからタロット占いはどうでしょう。
要するに出たカードの組み合わせで運勢を占うのだから、性別が介入する余地はなさそうな。もし関係あるならタロットカードは狭い範囲に生きてるんだなぁと思います。
逆にLGBTQ向けの占いの結果はLGBTQ向けだから、これもまた違和感もあります。占う前から「複雑な事情なんですよ私」と申請しているわけで、それは予め用意された専門の回答を一つ引くようなおみくじやあみだくじ的な占いなので、それなら普通のおみくじやあみだくじの方が確率分布的に精巧度が高いです。
シンプルな回答でかつ占う人物の環境に左右されない占いはないものか…。
やっぱり朝の情報番組に出てくる星占いか。
深いな、あの星占い。