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好きと得意は別の話というか別の次元。

【-31- 空が鳴っている|いくら水をやっても死んだ種から芽は出ない(12)】

 国語辞典を開くと“空”を使った単語の多さに気づく。私たちが普段使っているものから私たちでさえ知らないものまで。

 雨空、夏空、空気、空晶、空翠……そこには日本人の美学と道徳すら感じる。

 では今、この窓から見えている空は私たちの知る言葉の中で何と表せばいいのだろう…。

 授業中に私の携帯が鳴ってしまった日の空は黒板の波線よりも青かった。

 ここまでなら良くある学生の失敗談だが、私の場合はもう一つヒネクレていた。

 当時の私の着信音は初期設定や流行曲ではなく、映画『着信アリ』のあの着信音だった。言わずもがな『ジャパニーズ・ホラー・サウンド』として名高いあの着信音である。クラスに1人は設定していたであろうあの着信音である。2年生に進級して新しくなったこのクラスの場合、その1人が私である。

 それにしてもあの映画の影響力は本当に凄い。もしこれが普通の着信音だったら

「おいおい誰だよ、まったく~~」

な感じで笑って叱って丸く収まるけれど、今回ばかりは音が響く教室のみんなが

「(ざわ…ざわざわ……ざわざわ……)」

と誰もツッコまなければ言葉すら発しない。まさに映画さながらの臨場感であった。人が恐怖に立たされたときの表情を私は見た。だがよくよく考えるとこれも変な話で、映画ではあの着信音が鳴った携帯の持ち主が何だかんだ死んでしまうわけだが、私の場合は自ら進んでそうしている。つまり自分自身で死亡宣告を作っているのだ。

 YouはShock お前はもう死んでいる。

 IはShock いっそ死んでしまいたい。

 これは金持ちの死亡遊戯とかでなく本当にただの若気の至りなんです…。

 嫌だよ…もっと生きたいよ…。

 来る、きっと来る。

 右の肩からトン トン トン

 後ろの正面 だぁ~れ?

 えっ……

 ぐ、ぐ、ぐぐぐぅぅぅ……

 なんだ担任かよ。

 思わず声が漏れてしまったと気づいたのは5秒後の職員室に連行される廊下でだった。もちろん携帯は半日没収された。が

「没収する前に着信音を変えろ」

「教室に戻る前にすぐ変えろ」

と担任直々の命令が下りた。今から電源切りますから関係ありませんよ? 何ならバッテリーも抜きますよ? それともメンタル的な問題なのか? そういや映画ではあの着信音、バッテリー抜いても普通に鳴るんだった…。

 2年から各種進路別にクラス分けされた中で理系コース『1組』に配属された私は序盤から非科学的な伝説を作ってしまった。

「お前なにやってんだよ~!!笑」

とはさすがに誰も言えなかったし、同じクラスメイトであり親友である杉下と仲代ですら躊躇していた。それでも昔から「人の噂も七十五日」と言う通り、七十五秒も経てば親友との笑い話になって、七十五分も経てば教室での笑い話になった。

 そういえば2年から担任が新しくなった。

 先生の名前は「石橋洋一」。担当教科は数学。石橋先生とは1年生(数学Ⅰ)のときから付き合いがあった。見た目がややハゲ気味の眼鏡中年な上にタメ口調で授業するフランクな性格だったので生徒たちにとっても声かけやすい存在だった。先ほどあった「着信変えろ」の一連も今までの関係があったが故のことだと思う。

『加法定理の覚え方』

sin(α+β)=sinαcosβ+cosαsinβ
sin(αーβ)=sinαcosβーcosαsinβ

“咲いたコスモス、コスモス咲いた”

cos(α+β)=cosαcosβーsinαsinβ
cos(αーβ)=cosαcosβ+sinαsinβ

“コスモスコスモス、咲いた咲いた”

を石橋先生の授業で習ったものの、生徒らからは

「覚えにくいぞー」

「分かりやすく教えろー!」

「工夫がないぞー職の怠慢だー!!」

など超ミニデモ活動が発生したので

「じゃーお前らよく聞け!」

と黒板にR18な語呂合わせが披露された。

 おかげでクラスの加法定理修得率は100%になった。これも男子校ならではの術である。

 この年はいわゆる名物先生たちに出会う年になった。

 執筆の関係上、少し省略するが……化学Ⅰを担当した田代先生は50代後半の背の低い白髪教師だったが、実際はその見た目を忘れるぐらい憎まれ口のプロフェッショナルだった。

「お前ら…これも知らないでここ来たのか。うわーっ怖い怖い! こんなんに日本のこれから委ねるのかよマジで大丈夫か日本…」

 そして滑らない話のプロフェッショナルでもあった。

 昔、田代先生が後の奥さんと横浜港で行われる花火大会を港の見える丘公園から見ようと行ったときのこと。その年の演出はド派手で発射地点である大型豪華客船の甲板から幾千の火花が散った。

「今年すげぇな~! ありゃ銅とナトリウムとストロンチウムのサマーバーゲンだな」

 次の日の新聞一面には『横浜開港祭花火大会 未曾有の爆発事故』と書かれていた。

 また別の話。

 近々、我が校の説明会でやる公開授業で人工ダイヤモンドを燃焼する実験を予定していた。奥さんは宝石に興味ない人らしいので、

「俺今度ダイヤ燃やしちゃうんだぜぇ~!」

と自慢げにアピールしたら、奥さんから

「もったいねぇことすんじゃねぇクソジジィ!!!!」

とリビングでそう言いながら胸ぐら絞められたらしいが

「中間試験5日前で問題用紙まだ作ってねぇから殺すなコノヤロ!!!!」

と言って死期を免れたとのこと。本人は三途の川の淵に咲いている花は白百合なのか確認してみても良かったなぁ~なんて言っていたが

「(まだまだ先だろうなぁ~)」

と初めて作った眼鏡で黒板を写しながら私は思った。

 他の話によると先生は学生のとき、ビートルズの武道館公演に行ったらしいので2015年の再来日で行われたポール・マッカートニー公演にたぶん絶対行っているであろう。白百合を先に見に行かなければ。

 1年の理科総合Aから科目選択で本格的に物理Ⅰが始まった。担当は部活の顧問でもある柵木先生。午前から「こんにちは」することになった。ただ昨年の絵布先生と違って、科学部員だからといって柵木先生は甘くなかった。

「あー違う違う、滑車で質量m引っ張ったときの張力Tの計算はこうだろ」

「なに計算した速度そのまま書いてんだよ、秒速と時速の変換は力学の基本だろ」

「物理専攻だったら“×9.8(重力加速度)”ぐらい暗算しろ」

 まったく甘くなかった…。

 そして同受講者の杉下と仲代も授業と課題のプリントにはヒーヒーだった。また毎回授業中に提出できなかったので物理ある日は放課後の教室で3人仲良くラグビースクラム方式で課題に取り組むことが多かった。自分たちの中では科学が好きだった私が残り2人に何とかアドバイスする、そんな日々が続いた。

 あるとき、職員室にいる柵木先生にプリント提出した後、こう言われた。

「お前は計算ミスが多いが誰より物理に意欲的だ。だから早くミス克服してあいつらを手助けしろ」

 せ、先生…!!

 私は物理が好きだった。

 課題が終わった後は曜日によるが科学部の活動になる。新学年になって頼りない私にも後輩が5人できた。春に行われた部活勧誘プレゼン大会で巨大静電気マシンに突進した甲斐があった。ちなみに巨大な静電気は視界にお星さま作ることをこのとき知った。

 話が少し変わっての補足なのだが…このブログは全て文章なので分からないが、私たち2年生・3年生と新しい1年生は明らかに違う部分がある。新生徒から制服が変わったのだ。冬服から夏服まで色もデザインも違う。つまり私たち2年生が最後の生徒なのだ。再来年には居ない色を着ていることで世代交代と生物絶滅の瞬間を嫌でも目の当たりにさせられる。やや大げさに書いたが、寂しいものだ。それでも後輩たちとの交流は楽しかったし、その年の夏の合宿もみんなで良い汗を流した。

 ここまで書いといてアレなのだが、その年に採った鉱物は覚えているものの、その他の出来事は前回ほど覚えていない。ただ2時間以上かけて登った山頂に押し迫るズレたスケジュールの関係上、山頂から5分足らずにあるスキー用のロープウェイに移動し、数時間前にいた麓に到着する20分間の中で因果関係の崩壊と世の無常を学んだのは覚えている。

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【あとがき】

 皆さんお忘れかもしれませんが…第18話の階段から落ちた時から私はあまり目が見えてないままでした。

 それでも勘と経験でそれなりに過ごせたし、授業も机を前の方にさせてもらってました。ついでに言えば前回出てきたギャルはボヤケた視界でも識別できるぐらいギャルだったのだ…。でも不安定だった我が家の収入もある程度までは安定してきたし、そろそろ授業も本格的に受けたかったので思い切って眼鏡を作ることにしました。

 最初は授業中だけ掛けりゃいいやと思ってたのが1週間も経てば寝るとき風呂のとき以外ずっと掛けたままになりました。

 鈍化って恐ろしい!汗

 そのかわり無くすことが減ったけど…苦笑

 ちなみにコンタクトは考えてません。

 眼球に異物入れるなんて怖いし、衛生管理も大変だし、昼寝癖があるから想像しただけでも危ない…。

 帰納法的な証明での解答です。

 そういえば数学的帰納法の証明って演繹法なんだよね、当たり前だけど。

 えっ、どういうことかって?

 話がややこしくなったな……さらばっ!!
 



※理由を知りたい方はそのまま下げてください。



【あとがき】で「数学的帰納法の証明って演繹法だよね」と書きましたが、そのままではあまりにも…なので少しだけ解説しようと思います。

 そもそも数学問題などの証明方法には演繹法帰納法の2種類があります。

演繹法(えんえきほう)』とは……全体に成り立つ理論を部分的に当てはめていく方法。

 たとえば「太陽は必ず東から昇って西に沈むので、明日も太陽は東から昇り西に沈む!」。これが演繹法の考え方です。

一方、

帰納法(きのうほう)』とは……部分に当てはまることを集めて押し進めて全体に通じる理論へと導く方法。

 たとえば「リンゴは甘い、ミカンは甘い、イチゴは甘い。つまり、それらを束ねる果物とは甘い!」。これが帰納法の考え方です。

 では、『1+1=2』はどちらでしょうか?

 これは誰が答えても『2』に変わりないので、この答えは演繹法です。

 もっとざっくりに書くと、1つの数式から出されるイコールの次の答えは基本的に1つしかありません。『風が吹けば桶屋が儲かる』理論と同じです。つまりこれも演繹法です。

 これを繰り返すことで不変な「式の答え」を出すので、算数や数学に出てくる式の解答のほとんどが演繹法だと言えます。同時に『風が吹けば桶屋が儲かる』とは演繹法の仕組みを分かりやすく例えた小話でもあるのです。

 では帰納法はどこで使われるのか?

 主に物理や化学など科学や経済学で威力が発揮されます。

 いくつもの小さい結果や現象や事案から大きい不変的な法則を導くので、これは立派な帰納法ですね。

 たとえ数式じゃなくても、過去に起こった事件や事例を基に憲法や法律が作ったり書き直したりするので、政治家や弁護士にも必要だと言えます。

 いわば文系理系関係ない重要な思考法です。

 となると演繹法に並ぶ第2の証明法『帰納法』が不変的に正しい解答を導くことを証明するにはどうすればいいのでしょう?

 ここからは高校数学の範囲になるので少し割愛しますが、つまりは「帰納法自体を証明するから結局は残った演繹法で証明するしかない(実際、演繹法で証明する)」。

→「数学的帰納法の証明って演繹法だよね」。

 かなり大ざっぱに書いたので多少の語弊はありますが、こういう理由であります。

 ちなみに『数学的帰納法』はあっても『数学的演繹法』はありません。それは演繹法を前提に扱われた世界で異彩を放つ証明法が現れたので、周りと差別化するために前者の言葉だけがあります。

 あと数学的帰納法の証明問題は2013年センター試験の数学ⅡBにも出ましたし、法科大学院の入試問題にも出てくるので、自分には関係ないやと思っている学生のキミ、要チェック!!

 えっ…そんなのとっくの昔に知ってるって?

 そっそうか…優秀なんだな!

 

 試験頑張ってね!!

 最後の最後まで色々取り乱しましたが……改めまして、よろしくお願い致します。