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好きと得意は別の話というか別の次元。

【-20- 二十一世紀旗手|いくら水をやっても死んだ種から芽は出ない(1)】

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 2002年4月。10年に及んだリハビリがなくなった。

 そして12歳の私は中学生になった。

『20世紀生まれ。21世紀育ち。』

 少し前ならカッコ良く感じた肩書きも、実際は地球上にいるほとんどの人が該当する本当にありふれたものへとなり下がった。昔のSF作家たちが思い描いたほど未来は進化しなかったし、時を重ねる毎に『F』が強調される展開になった。当初の予定では1年前には猿が骨投げちゃうような宇宙の旅もできたはずだったし、1年後には山手線上空には鉄腕少年が空を飛んでいるはずだった。けれど公約通り実現してるのは過去40年間に公約したFの強いテレビの中だけ。

「夢ある“ファンタジー”」は、「単なる“フィクション”」へ。

 なんとも情けない未来だ。

 こうなったら次のFに期待しよう。

「藤子・F・不二夫」の『F』だ。

 当初では2112年9月3日にマツシバロボット工場に落雷した衝撃でネジ一本外れたネコ型ロボットが『ドラえもん』と名乗る予定だ。それまで110年の猶予がある。さすがに叶えているだろう。それまではこの前買ったゲームボーイアドバンスでちょっとばかり未来とやらを味わおうではないか。

 うわっ! 何だこれは! 画面メッチャ綺麗じゃないか…!(当時ゲームボーイカラーを持ってなかったのでゲームボーイポケットからの躍進は掌の中が産業革命に匹敵した)

 うわっ! 気がついたら8時過ぎてるじゃないか!?

 登校初日なのに何で誰も注意しなかったんだ。めざましテレビどころか朝ドラも終わっちゃってるじゃないか…(現在の時間を知るのはここから5秒後)。

 私が通う中学校は学区内の小学校4校が集まる地元で有名な市立中学校だった。

 理論上4倍の生徒が在籍してるはずですが、約30人の小学3組だったのが約40人の中学6組と多少の中学受験者を差し引いても少子化の風をひしひしと実感する中で、突然だが私の代から「ゆとり教育」という国家的プロジェクト実行された。

 いわゆる「ゆとり世代」の始まりだ。

「オリジナル・ゆとり・ジェネシス」だ。

 そして砂浜に書いたこのプロジェクト名は、押し寄せた波と一緒に跡形もなく消え去った。戦争を知らない子供たちは数十年後、責任を知らない大人たちに成長した。責任を知らない点で言えば「団塊」と「ゆとり」は似ている。実は団塊=オリジナル・ゆとり・ジェネシスなのか?(これ以上書いたら色々と怒られそうなので止める)

 童謡『一年生になったら』にもあるように、この中学校には友達400人の可能性がある。

 小学校で友達出来なかった私にもチャンスがある。

 今日から「普通の学生」になるのだ。

 私のクラスは今目の前にある2組。

 さぁ、過去の失敗とおさらばして中学デビュー!

 横スライドの扉を抜けると、そこは三泊眼・眉無し・染髪たちの檻のない動物園であった。

 この時点で失敗したと確信した。

 先ほど書き忘れたが、ウチの中学校は過去に暴力行為などで一部有名な問題校で、殺人を除けばほとんどやっているのでは? というような学校だった。

 飲酒喫煙はまだかわいい方で、過去最悪のときは、いじめられっ子→

①→を正座させて輪で囲み一人一回ずつ顔面ローキックをする(その子は顔面複雑骨折で元の顔には戻らなかった)。

②→を後ろからシャツ下にカッターを入れて腹部を裂く(そのとき居合わせた先生が捕まえようとしたら先生の手首を切って逃亡)。

③→の顔を押さえつけて鼻にカップ酒を流し込んで急性アルコール中毒を起こさせる(奇跡的に助かったのだが、未成年ということもあり大人以上に酷い後遺症が残った)。

④→の名義で隣市のソープランドに通っているのが警察の摘発により発覚(そもそも何で通えたかの理由の一つに、このソープランドのオーナーがこの学校のOBという噂)。

 以上の他にも数々の問題を起こしているのだが、あまり書きすぎても色々と揉めるので、いかに危険なのかだけでも察してほしい。

 さすがにここまでではないが、私も追々被害を受けることになる(それはまた別の話)。

 ちなみにウチの学校の教室は基本的に天井や壁が茶色い。歴代先輩たちの喫煙によりヤニが染み着いて取れないのだ。

 私はこの学校が嫌いだった。

 そしてそれ以上に勉強が嫌いだった。

「分からないものは分からない」

「分からないものをやっても不快感しか残らない」

Q「ここでこうやったらこうなるだろ?」
A「いや知らないよ」

 そんな理由で勉強もせず漫画ばかり読んでいた。この時ハマっていたのが『20世紀少年』。

 あらすじをすごく雑に書くと……世界征服を企むオカルト教団を阻止するサスペンス要素強めの本格科学冒険漫画(3部作に渡る映画化により世間的にも有名になった)。その第5集の現代編(2000年12月31日)にて教祖“ともだち”は東京に巨大ロボットを襲来させ、東京を含め世界各国でウィルステロを起こし、この世の終わりの危機に陥る場面を読んでいた。

 そのとき、横から家族に「勉強しろ、進路どうするんだ」と小さいときからお馴染みの説教が始まった。しかも飽きずに毎日毎日しつこく言ってくる上に、頼んでもいないのに一方的に圧力をかけて怒鳴る先生と、人だと思っていない言動で私を蔑む野郎しかいない学校を恨み、以前から学歴至上主義のこの社会にも強い怒りを抱いていた私は込めて言った。

「オレ、中学でたら“ともだち”みたいな教団入って、こいつらみたいにテロ起こすから勉強いらね」

 そして家族はこう言い返した。

「あのねぇ…こういう新興教団のトップや幹部は全員国立大や難関私立を卒業したエリートしかいないの。現にオウム幹部のほとんどが東大・京大・早慶出身だし、地下鉄でサリン入れた袋破った犯人たちは日本有数の心臓外科医と早稲田を主席で卒業したノーベル賞に近い研究生だったし、そのサリン作った主犯も筑波大の優秀な院生で将来教授候補だったの。むしろ学校や会社よりもエグい学歴社会なのよ? あんたみたいな無能中卒入っても足引っ張るゴミクズで捨てられるわ。まぁ、あんたがそういう人生で大満足なら勝手にしなさい」

 私は何も言い返せなかった。

 学歴社会を倒す団体が学歴社会…どこ行っても学歴学歴学歴学歴……誰もが口を開けば学歴学歴学歴学歴学歴………あぁぁぁぁもう腐ってやがる!!!!!

 持っていた20世紀少年第5集を壁に投げ捨て、晩ご飯をストライキして布団でふて寝してシクシク泣いていた。

「くそっ…くそっ…みんな腐ったミカンだ…」

 風や雷を操らない方向で中二病ど真ん中だった。

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【本日の参考文献】

浦沢 直樹
2016-01-29
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【あとがき】

 たとえば一時ネットで話題になった2015年当初の予定(フィクションの出来事)では、

碇シンジが上京し、その際に第3使徒サキエルが東京襲来(新世紀エヴァンゲリオン)

万国博覧会開会式にてローマ法王暗殺を“ともだち”がかばって救出(20世紀少年)

◆その後“ともだち”は生死の中を復活し、聖母降臨として西暦が終了して来年より『ともだち暦』開始(20世紀少年)

 この公約を実現したのは、やはりFの強いテレビの中だけでした。

 また今回執筆するにあたり久しぶりにウチの中学校を検索かけてみたら数年前に在校生がSNSの書き込みで万引きを自慢して補導されてました。時代と共にカッターはバカッターに変わったか。

 そして本編でしつこく書いたように当時の私は勉強が嫌いすぎて荒れてますが、実際は内弁慶のビビりヘタレ糞野郎なので傘で突いても噛みつきません。そして現在も相変わらず勉強は得意ではないですが知らないことがあれば素直に勉強しています。というより昔みたいに嫌いなことを頑なに跳ね返す気力が弱くなったというか勉強より疲れるようになりました。老化でしょうか、老化かもね、老化だな…。