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好きと得意は別の話というか別の次元。

【#034|推理劇場】

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 晩ご飯の買い物から帰って、羽織ってたカーディガンをハンガーに掛けて、スマホとか財布とかズボンのポケットにある小物を出して、リビングの床に転がってた部屋着に着替える途中のTシャツとパンツ一丁姿で少し頭をポリポリ掻いていたら、掻いた右手の指にドロリとした赤黒い液体が何ヵ所にも付いていた。

 は、何これ、出血…?

 焦って頭皮の掻いた部分とそうじゃない部分を毛髪かき分け触りまくって出血元を探したが、出血どころか湿っている部分すらなかった。というより頭部に全く痛みがないのだ。そりゃそうだ、何か怪我した覚えがないから痛いはずがない。もちろん身体にも痛みや怪我はなく、そうなると余計に指の血痕がどこから来たのか怖くなった…。

 そもそも、これ血だよね…?

 そう思った理由に、怪我した際の血とは到底思えないほど赤黒くてドロドロしているのだ。まるで水気の少ない赤い絵の具のような類いの粘り気があり、指で広げると自分の知る血より広範囲に伸びた。もしこれが血なら、毛細血管や動脈部分ではなく静脈部分から出血している可能性が高い。動脈性出血ならサラサラゆえにピューピュー吹くのでまず違うし、毛細血管出血なら放っておけば1時間後には固まって塞がるが、静脈性出血ならドロドロゆえに固まりにくく塞がりにくい。まず無痛の静脈性出血してる時点で相当ヤバい…。

 匂いはどうだろうか。恐る恐る嗅いでみたら無臭だった。ご存じ血液には鉄分が含まれていて、独特な鉄の匂いが少しだけする。ごく少量なら見逃すこともあるが、これほど指の腹で広げているのに匂いが少しもしないのはおかしい。まあ舌で確認すれば手っ取り早いが血じゃなかったら嫌なので止めといて、現時点で血である可能性はかなり下がった。だけど正体がまだ分からない。

 今度はポケットから取り出した財布とスマホを調べてみた。細かい溝の部分すら付着してなかったので、つまり指に付いたのは部屋着に着替える途中だと判明した。上のTシャツは朝からずっと着ているので除外して、下の脱いだズボンを調べてみても赤いシミらしきものはなかった。そうなると付着はズボンを脱いで頭掻くまでのわずか数秒間に行われた。この事件を解くトリックはこの数秒間に潜んでいる!

 だんだん某眼鏡少年探偵みたいになってきたが、ここまで来ると真相を調べるよりも推理を楽しむことがメインになってきた。それに血ではないと判明した時点でこの液体が何かおおよその見当はついている。ただ知りたいのは一体いつどこで付いたのか。それさえ知れたら私は満足なのだ。

 現場確認でリビング一帯に目を配ったら、床にひとつだけ小さい赤い点があることに気がついた。もう拭き取られた後だったが、たしかに指に付いた色と同じ赤黒かった。点周囲の床は乾いていることから、時間的にティッシュで拭き取ったのであろう。ゴミ箱を覗くとビンゴで、赤いシミが付いたティッシュが入っていた。あとゴミ箱に被せたビニール袋の口元に広がって乾いた赤い液体の跡が残っていた。そうか、ズボン脱いだあと床のどこかに転がってるはずの下の部屋着探す途中でゴミ箱どかそうと無意識に持って、そして指に付着したのか。

 もう残りは赤い液体の犯人に訊くだけだ。

「おっ父、今日プリンターのインク入れた?」

「ああ、入れたけど」

「そのとき少しインクこぼした?」

「なんで知ってんの?」

 私の推理は見事的中した。

 あの赤い液体はプリンターの赤インクで、私が買い物に行っている間に父がインクのチャージをした際に失敗したのだ。その証拠をティッシュで吹き消して捨てた際、まだ乾ききってないインクの塊がビニール袋に擦り付いて、そこに偶然触れた私の指まで写ったのだ。

 今宵もまた難事件がひとつが解決された。だがこの世に事件がある限り、私の推理は終わらない…。

「さっきから何ニヤニヤしてるか知らねぇけど、まず何か履け」

「あっ…すいません」

 皆さんはお気づきだったか。つい推理に夢中になっていたが私はまだ下の部屋着を履いていなかった。もし30手前の男性がパンツ一丁でリビングをうろちょろ動きまわっていたら、皆さんは誰が犯罪者だと思いますか?

 訊くまでもなかったですね、さっさと部屋着を着て自室に去ります…。

 置いた財布とスマホを取って自室に向かう途中に今度はキッチンから母の大声が聞こえてきた。

「綿飴ー! お風呂沸いてるから早く入っちゃって」

「……」

 今度は洗面所で裸になった。

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【本日の参考文献】

マリア・コニコヴァ
2016-01-08
楽天ブックス

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【あとがき】

 これ昨日あった出来事で序盤青ざめて調べてた話なんですが、ブログ記事にまとめようとしたときエピソード的にもっと面白くなるかなとミステリー風に挑戦してみたのですが、これがとんでもなく難しい…。

 文章の参考に本棚にある読み終わったミステリー小説数冊を取り出したのですが、「そうそう、ここが全ての事件の伏線になってたんだよな」「犯人が自白する度に証言が変わる理由、見事に騙されたな」「本当なんでエヴァンスに言わなかったんだろ…と思いながら読んでたけど、そうかそういうことだったのか…!! って大興奮したよなぁ」なんて普通に読書楽しんでました…(ミステリー面白いもんね)。

 おかげで(自己)満足できる記事になりました。そして世の中にいる推理作家たちの凄さがよく分かりました。アガサ・クリスティーは本当に天才だった…。シャーロック・ホームズの思考は人間じゃなかった…。江戸川コナンの世界の時間軸どうなってんだ…(それ違う話)。

 運動よりは食事、食事よりは読書、これから読書の秋なので、より一層楽しみになります!

 次は何読もうかな。

 とりあえず床に落ちてた雑誌でも読むか。こんな厚さ薄い雑誌買った覚えないけどな…。

 どれどれ、『タウンワーク』?

 ゴミ箱に捨てました。

 せ、先週号だったから…!汗